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「…温かい。」
そう呟くとオレの首筋に頬擦りをし、冷えた身体を擦り寄せた。未だ兄の髪には雨の匂いが残っていた。
あー…もう!何か色々と駄目だ。
今すぐに抱きたい気持ちを何とか抑え、ロストの身体を温める事に専念した。普段滅多に甘えない兄がこうして甘えてくれる事は、好意を持っている身としては嬉しくも辛い事だ。お湯が溜るまで後15分。
…頑張って耐えるんだ、オレ。
自分にエールを送りながらも、膝の上に座る兄をちゃっかり堪能した。顔を覗くと温まって眠いのかウトウトしていた。
睫毛長いな…肌も白いし、女みてぇ。
いや、そこらに居る女よりも綺麗だ。
うっかり声に出しそうになった。そんな事を口にすると間違いなく拳が飛んで来る。せっかく甘えてくる兄の機嫌を損ねたくない。オレは黙って観察を続けた。すると不意にロストと目が合った。
「…さっきから何だ?」
「ぅへッ!?」
急に声を掛けられ、我ながら間抜けな声が出たと思った。
「ジロジロと人の顔を見て、何か付いてるのか…?」
「え…あ、いや。何でもない。」
ロストはオレの曖昧な返事に怪訝そうな顔をすると「そうか?」と呟いた。
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