工場の子供

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
ある所に現在も100人程が働く古びた工場があった。 ここでは、製造関係の仕事が行われており、交代制で夜勤もあったらしい。 夜勤者の中には、仕事が終わると、顔が青ざめていた者も少なからず居たという。 その理由を、ある一人の男が知る事となる…その男の名はサトル(仮名)といい、たまたまその日は夜勤のシフトにあたっていた。 サトルは普通に仕事をしていたが、夜10時頃に、駐車場の車に忘れ物を取りに、非常口から外へ出て、忘れ物を取り、工場へ戻ろうとした時…それは聞こえてきた! どこからともなく「わ~っ…わ~っ」と子供が叫ぶような声が…それは段々近付いてくるようで、気味が悪くなったサトルは駆け足で工場へ戻った。 一緒に夜勤で働いていた人にたった今経験してきた内容を話すと、その人は「前に私も工場の中で、人影の様な物を見掛けたのよ。」と話した。 サトルは少し震えながら「やめてくださいよ。休憩に眠れなくなるじゃないですか。」と苦笑いを浮かべて言った。 そして夜中の12時を迎え、休憩の時間になった。 他の作業者はみんな食道へ向ったが、サトルは眠くなったので、工場内の長椅子に横になり、仮眠を取っていた。サトルは寒気を感じたのか、少し眼が覚めた。何故か異様な雰囲気を感じる。 すると「タッ…タッ」と誰かの足音が…小さい音…子供だろうか。サトルは「まさかこんな時間に子供が居るわけないよな。」と、食道へ歩き出した。 すると、その小さな足音もサトルを追う様に付いて来る。 サトルは後ろに何か気配を感じ、ゆっくりと振り返った…するとそこには、青白い顔をして不気味なうすら笑いを浮かべた子供が立っていた! 子供は「お兄ちゃん…遊ぼうよ。」と笑いながら言った。 サトルは声にならない叫び声をあげて、食道へと駆けて行った。 食道ではみんなが休憩を取っていて、サトルも食道の入り口の扉を開けようとしたが、何故か引いても引いても開かない。 サトルは「みんな!みんな!助けて!」と必死で戸を叩きながら叫んだが、誰にも届かない。 そして、後ろから子供が現れ、「お兄ちゃん…何してるの?早く遊ぼうよ。」とサトルの腕を引っ張った。 その力はとても子供の物とは思えぬ程強く、サトルは抵抗虚しく、どこかへ連れて行かれた…。 その後、サトルという人物が一緒に働いていた事も、その存在すらも誰も知らない。 ただ、叫び声は二人で叫ぶ声に聞こえるらしい…(終)
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!