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「どうしてっ……どうして、そんな男と………だ、だだだ」
「『抱き合っているのか』、ですか?」
「そうっ、それ!!!!」
真っ赤な顔で怒っている千代を見て、翡翠は悲しそうに表情を歪めた。しかし先程彼女をフォローした赤髪の女性を見て、その歪みは消えた。赤髪の女性の正体は、魔女長直属の騎士の一人。そして最強の騎士の称号を持つ、唯一の魔女である。その称号とは―――
“THE・KNIGHT”
魔女というのは本来、呪術等を使用して戦う者達だと言われている。しかし魔女騎士達は違う。魔女として生まれたが、呪術の才能に恵まれなかった為杖を握る事ができず、代わりに剣や槍を握る事を選んだ者達。その中で最強になった魔女、それが先程の赤髪の女性だ―――。
翡翠が彼女を見て、安心した様子を見せていたのは、彼女を心から信頼しているからだ。しかし翡翠は、まだ不安を全て拭いされていなかった。千代が神に対して怒りを示している事。こればかりは何とかせねば、と必死に考えていた。絶対に“誤解”を解かなければと――。
「千代、何故そんなに怒って……」
「そうよ、千代。貴方が怒る理由なんて……」
「……さい。うるさいうるさい、うるさーいっ!!!!」
「「!!」」
いきなり千代は、辺りに響き渡る様な声で怒鳴り散らした。千代は嫌だったのだ。自分だけの母を他の者にとられてしまうのが――。彼女は恐かった。
本当にこの男が神、創造神だというなら……母を連れ去ってしまうのではないか。しかし生け贄だというなら、この場で殺されてしまうのではないか、と千代は考えていた。
そんな想いが彼女の頭の中を占めていたせいで、先程千代はいきなり怒鳴ってしまったのだ。自分にとって、たった一人の母親を失いたくない。そんな少女、千代の姿を見て――神は罪悪感に苦しめられていた。
こんなに母想いの少女に、胸が張り裂けそうな神。しかしこのままでは駄目だと思ったのか、自分から彼女に歩み寄った。
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