プロローグ

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神が発した言葉に対して、千代は頷いた。その様子を見ていた楓は、千代の表情を見て少し驚いていたが、それはすぐに消えて、満面の笑みへと変わった。何故か。理由を言うとすれば、千代の変化……。今までむすっとした表情しか浮かべなかった千代が、あんなに嫌悪の意を示していた対象である神に対し、頬を少し赤らめながら嬉しそうに、又は恥ずかしそうな表情を浮かべながら頷いていた。 「分かったわ、いくらでも教えてあげるわ」 「ああ、教えてやろう。時が許す限り――――」 ―――――プツン まるでテレビの電源が落ちてしまったかの様に、彼らの姿は途端に見えなくなってしまった。何も存在しない、真っ暗闇の空間。そこに一人、金髪金目の男がいた。彼の姿は、暗闇にいる筈なのにはっきりと見えている。その男は、己を見ているであろう何者かに向かって、視線を向けてから口を開いた。 『――――待ち侘びたぞ、我の血を継ぐ者よ』 『今お前が見たのは、過去に実際にあった事だ』 『忘れるな、紅き満月を』 『悲劇を起こさぬ為に、探すのだ―――』 『白き悪魔を倒す為に必要な、守護者達を――――』 『必ず見つけ出せ、黒衣の魔女と……その守護者を』 厳しい表情のまま、彼は何者かに視線を送り続けた。何もいない筈の空間に手を伸ばすが、それを誰かが握り返す事はなかった。しかし、なにかを感じ取ったのか、少しだけ――――笑った。そして、また彼は言葉を続けた。 『大丈夫だ、心配はいらない』 『彼等には、必ず会える』 『守護者の数は、九人――――』 『時が来るまでに、必ず集めるのだっ……!!』 『――――といっても、お前は目覚めたら忘れるのだろうな』 『構わん、来るべき時が来れば思い出すだろう』 『待っているぞ、我の元へ来る日を………』 そう言ってから、彼は姿を消してしまった。彼が姿を消した空間は、明かりを失ってしまったせいか、本当に真っ暗になってしまった。しかし、その暗闇までもが、消失しようとしていた。先程彼が話していた、何者かが“目覚める”という合図のように。そうして空間は直ぐに消えたが、何もない筈の無の空間に、今度は白い人のようなものが、一人でに存在していたが―――― ―――プツン 先程と同じ様に、それは見えなくなった。 そして、今度こそ本当に何もなくなった。
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