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――さん
――いさん
「兄さんっ!!」
「う、うわぁぁぁ!!!!って、なんだ……お前か」
ベッドから飛び起きた金髪の青年は、自分と同じ顔をした男に勢いよくぶつかってしまった。
「っう………折角起こしに来てあげたのに、何するんだよ……兄さん」
「っ……それはコッチの台詞だ、コノヤロー!!!!!!俺達双子なんだから、同じとこ怪我したら痛み二倍じゃねーか!!!!」
……そう、喧嘩している金髪の青年達は双子。顔は似ているが、中身は正反対になってしまったのだ。だから先程の様に、些細な事で喧嘩をしてしまう。
「……ま、喧嘩はそろそろ終わりにしようか」
「ん、あぁ……そうだな」
「じゃなきゃ兄さん、バイトに遅れるしね」
「―――へ?」
「何とぼけてんの?昨日兄さん言ってたじゃない。“明日は朝早くからバイトだ”って……」
だからと言って、仲が悪いという訳ではない。この二人は、たった二人で一軒家に住んでいる。だからお互い助け合ったりもする。
といっても助けるのは、いつも弟の役目になっている。今日でいうなら、朝起こしてもらった事がそうだ。
弟の話を聞いた兄は、顔を真っ青にしてから布団を投げたかと思えば、突然パジャマを脱いで床に投げた。そして高速で、今日一日着る服を着ていく。
「やべぇ、やべぇやべぇやべぇ………!!!!」
「何がヤバいのさ?」
「今日は娘さんが来るらしいんだよ、千代さんの」
「千代さんの娘さん……?」
「そう、娘さん!!!!最初から遅刻してカッコ悪いとこを見せてみろ!!!!俺の、俺の好青年のイメージがぁぁぁ……!!!!」
一人でうなだれている兄を見て、弟は苛々を通り越して呆れていた。いつもなら一発殴ってツッコミをしているところだが、兄が馬鹿すぎるせいで全身の力が抜けてしまった。
「兄さん、取り敢えず早く行けば?」
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