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あたしは家が嫌いだった。
理由は明白だ。
家にはあたしの居場所なんてないから。
母親は幼い頃からあたしを怒るばかりで他にはたいして何もしてくれなかった。
姉はあたしとは正反対でうらやましい部分もいっぱいあって、ある種の憧れ的な気持ちももっていたけれど、いつの間にか口をきかなくなった。
そしてあたしはあなたに
「家出したい…」
と漏らした。
あなたは反対するどころか
「俺のとこにくればいいよ」
そう言ってくれた。
まさか本当に家出するとは思ってなかったと思う。
その話をしたその日の晩にあたしは部屋を抜け出すことになる。
***
母親と姉の笑い声がうるさくてたまらなかった。
レポート用紙にマジックで
「あたしは人形。心なんてない」
「あたしを此処から解放して」
色んな思いを書きなぐった。
そして部屋の壁一面にその紙を貼り付けた。
母親へのあたしなりのSOSだった。
それから部屋を抜け出して外に出た。
自転車にまたがり無我夢中でこいだ。
あなたのところへは行く気なんてなかった。
ただどこか遠くへ行きたかった。
でもあなたの言葉を思い出した。
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