Prologue

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昔から俺には人とは違う力があった。 俺にはなぜか、人には見えないものが見えた。 幽霊や天使、もちろん悪魔も。 俺がどんなに見たくないと願っても。   それに、どんな事件や事故に巻き込まれても、俺は生き残っていた。 乗っていた飛行機が墜落したとき、俺はただ一人生還した。 乗客も乗務員も、誰も助からなかった中、俺だけが、ただ一人。 しかも、掠り傷の一つも無い。 一度ではない。 何度も、何度もだ。 何故なのか、それは分からない。   幼い頃は、天使や悪魔が俺にしか見えないと気付かずに友達や大人に話して気味悪がられたり、【嘘吐きグレン】と馬鹿にされたりもした。 虚言癖に加え、事故の唯一の生存者となれば、皆余計に俺を遠ざける。 あの子供は何かがおかしいと。 本当に俺には何なのか分からない。 この世界は本当に分からないことだらけだ。   昔は天使や悪魔が見えることがとても嫌いだった。 けど今はその力が、俺がしなければならないことのヒントになっている気がした。   立ち止まり、さっきまで自分がいた病院を振り返り眺める。 そこだけ切り取られたように空気が違う感じがする。高い塀に囲まれ、植物の緑があるものの、全てが白で覆われている。 常に付き纏う、消毒液の臭い。 一切の無駄を排除した、シンプルな作りの建物。   ――まるで隔離病棟か精神病院だ。   ある意味監獄だな、なんて毒づきながら深く息を吐き出した。   空を見上げれば、雲が空を覆っている。 先の見えない不安を表すように。   でもやめるわけにはいかない。 しなければならない事のために、何より自分自身のために。   そしてあての無い旅に出た。
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