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俺は旅を続け、ある街に辿り着いた。
そして、数年の月日が流れた。
大都市アーメストにあるメインストリートの一角。少し奥まった路地に俺は事務所を構えた。
『グランフィールド法律事務所』
だが、あくまでもそれは表向きの話だ。副業、とでも言っておこうか。
「がッ……?!」
鈍い呻き声をあげ、男が地面に崩れる。昨夜の雨のせいで出来た水溜まりに、頭から勢い良く倒れこんだ。
街灯の無い暗い路地裏に、かすかに月明かりが射し込んで男を照らしていた。
倒れた男は、人の形はしているが、人の顔をしてはいない。
――人ではない異形の者。
「また悪魔か……」
「……ここ最近増えてるよね。悪魔が関わった事件」
倒れた男を足蹴にする少年。
見た目は12、3才ほどで、黒のノースリーブジャケットと短パンに身を包んでいる。身長はそんなに高くない。無造作にはねた髪の毛と瞳は燃えるように紅い。
つい先程までは、この幼い顔立ちからは想像出来ないほどの殺気を放っていた。
「こらリード、蹴るんじゃない。汚れるだろ」
「だっとコイツ弱すぎんだもん」
リードと呼ばれた少年の服には男のものと思われる血がこびり付いている。
男――いや、悪魔を倒したのは、少年ただ一人である。
男は、もう動かない。
少年は少しつまらなさそうな顔をしていた。
月はただ静かに俺たちを見下ろしていた。
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