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セリンは、暗闇の中、コツコツと音を立てて歩を進める。
視線の先に在る広場には、真っ黒な狼の様な魔物が徘徊していた。
セリンはそれを確認すると、歩きながら、腰のコピスの柄に手を掛け、ゆっくりと引き抜きながら魔物に近付き、堂々と叫んだ。
「おい、其処の黒いの。俺と遊ぼうぜ……?」
セリンは、持っていたコピスを、魔物に向けて突き立てた。
それに対し、魔物は当然の如く、セリンに遅い掛ろうと、走って来るのであった。
セリンは、驚きもせず、口元に笑みを浮かべたまま、その光景を見つめている。
「グルアァッ!」
そして、魔物が、食い掛ろうと飛び上がったその時
「……、隙だらけなんだよ、アホが!」
セリンは、体勢を低くすると、高く飛び上がった魔物の腹部を目掛けて、自分も飛び上がると同時に、コピスを斜め上に振り上げた。
「ギャアアアッ!」
魔物は、斬られた腹部から、鮮血を吹き出し、悲痛な叫び声を上げると、仰向けに倒れた。
そのまま、苦しそうにうめき声を上げる。
普通の人間ならば、これで決着が付いたと、手を止めるだろう。
しかし、セリンは違った。
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