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「ちょっと、セリン!何してるのさ!?」
その時、背後から、足音と共に、聞き慣れた声が耳に入って来た。
セリンは、自分に向けられた言葉に、反射的に振り返る。
「ティム……、か。
見ての通り遊んでたんだよ。今終りにすっから、待ってな」
振り返った先に立っていたのは、一人の少年だった。
彼の名前は、ティム。
セリンが裏街に来てから、最初に出来た友人だ。
その様相は、コーヒー色の短髪の下から覗く、緑色の澄んだ瞳に、彼に取っては少し大き目の、フードの付いた白色のTシャツと、黒色の半ズボン。
それに、動き易そうな、白色の靴を履いており、片手には、彼の瞳の色と同じ、緑色の宝石が填め込まれた杖を持っている。
彼は、生まれた時から“魔術”を使えたが故に、それを恐れられ、自らを産んだ父母に捨てられた、と言う過去を持っている。
それからと言う物の、拾われ、捨てられ……、その繰り返しが続き、今に至っている。
「駄目だってば!幾ら魔物でも可哀想でしょ!?」
セリンが再び魔物の方に視線を戻し、振り上げたコピスを、今にも振り下ろそうとするのを見て、ティムは必死に止めようと、叫んだ。
余りにも惨い光景を目の当たりにしたが故に、その声は震え切っている。
「……、ちっ、わーったよ。ったく、中途半端だったらねぇ」
セリンは、不機嫌そうに、コピスを鞘に収めた。
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