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第一章第一話 頼みごと
時は 870年8月16日、 『白狼村』に、王家が長年に渡って待ち望んできた男児が誕生した。
とても生気に満ち溢れた普通の子供だった、ただ一点を除いて。
基本的にこの村で生まれる子供には、宿った龍の種類によって違う紋様が体の一部に描かれるのだが、その子は違った。
その子供の紋様は火、水、雷、木、土、風のどれにも当てはまらない独特のものだった。
なによりその紋様の大きさが普通ではなかった。通常、手の甲ほどしかないのだが、その子供には、背中一面に刻まれていたのだ。
この異様さにその場にいたもの達は驚き、龍人兵や民を治める冷静沈着な33第目龍影ですら驚愕の色を見せた。
「この子こそ、予言の子に違いない」
とその場にいた者達は口々につぶやいた。
『予言』とは、この村には村の創設者である初代龍影の時代に書かれた予言書のことである。
口々に呟かれていたのはその書の一節に
『後に背一面に紋様を刻まれし赤子がうまれる。
そのものはその強大な力を使い乱世を統ずる覇王となる』
と記されていたのだ。
その子供は文書に従い、『我狼龍牙(がろうりゅうが)』と名付けられ、本人に知らされることなく、実の親から引き離され、我狼家が育てることとなった。
それも、その実の親2人を村から追放までして。
実は、この白狼村は世界政府との間の関係がこじれつつあった。
政府側からの開国するようにとの要望を断っていたからだ。
その状態はコップ一杯に入った水と同じだった。後一滴、例えそれが小さくてもなにか起きればまた戦争が起こる。
その来(きた)るべき戦乱のために、村には戦力が必要だった。
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