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やはり不機嫌そうに返された。
なぜだか気になったので、すぐ横を急ぎ足で歩いていた使用人に聞いてみると、なんと33代目龍影が引退を発表したのだそうだ。
それだけでもすごい問題だが、それ以上に注目を集めるのは次の龍影は誰にするかということだ。
それを尋ねると、今日、龍影直々に本人に伝えに行くのだそうだ。
蒼龍は昔から龍影の座を狙ってきた。
つい最近村を悩ませていた魔物を50匹倒すということもやってのけたのもそのためだろう。それで、「次こそは」とでも考えているのだろう。
そうこうしている間に使いの者がやや急ぎ足で蒼龍に近づいた。
「旦那様、龍影様がお越しになられています」
「なに?すぐに客間に通さぬか、馬鹿者が」
蒼龍はそう怒鳴りつけるなり、すぐに客間に向かった。
それを見送り、龍牙は欠伸を1つ零した。
「さあて、ご飯でも食べようかな・・・」
ぶつぶつと独り言を呟いていると、客間の方から執事の駕燕(がえん)が急ぎ足でこちらに向かってきた。
「若様、客間にお急ぎ下さい」
珍しく大きな声で話してきたことに驚きを感じながらも、その気迫に圧倒された龍牙は理由すら聞かずに客間に直行した。
「失礼します」
恐る恐る襖を開けると、そこにはいらただしげにすわる蒼龍と、それを全く意に介していない33代目龍影、攫犀(かくさい)が向かい合って座っていた。
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