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それは母が、今日はお休みにしましょうね。と言っていたからだ。
タケユキは不思議に思い母に理由を尋ねた。
母は少し悲しそうな目をしながら、引越しをするからだと答えた。
タケユキはふと幼稚園の先生や友達の事を思い出す。
今日は楽しみにしていたお絵描きの日。
それは困る――。
そう思ってまた母に聞いてみた。
「またいつでも会えるじゃない。」
と母はタケユキの頭をクシャクシャッとして諭した。
でもタケユキは、それが嘘だと言う事が直ぐに解ってしまった。
それは、母がタケユキに悟られないように目に涙を浮かべて、真っ赤な顔をしていたからだ。
タケユキは急に淋しくなって母に言った。
「お母さん。タカシちゃんやマァちゃんに会えなくなるの?。」
母はもう一度タケユキの頭をクシャクシャッとして言った。
「暫くみんなとは会えなくなるかも知れないけどね、直ぐに会えるようになるよ。心配無いからね。」
そう語尾を震わせながらうっすらと涙を目に浮かべていた。
大好きな母が泣いていた。
それがタケユキにはどうしようもなく辛い出来事で、それ以上何も聞く事が出来なかった。
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