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「あの頃はホント、苦労したなぁ…。」
タケユキは独り言を呟きバックミラーを覗き込む。
後部座席には、物凄い格好をして気持ち良さそうに寝ている母がいる。
朝からあんなにはしゃいでいたんじゃあ…仕方ないかな?
そう思いながら、タケユキは一人ひそかに笑みを浮かべた。
前方をみると曲がる地点に差し掛かっている。
方向指示機を左へ作動させ、ハンドルを左へと切った。
タケユキは二十歳で運転免許証を取得した。
家の借金返済でそれどころではなかったからだ。
それから二年。
高額のアルバイトや危ないバイトもこなし、やっとの事で22にして車を手に入れた。
(目標としてまず車だな。)
そう決めてからやっと納車出来た日は、足が震えて止まらないくらい興奮した。
気が付けば涙を流していたぐらいだ。
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