二章 急接近

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実は二人は両思いだった。勇二の行動・言動に純粋さを感じ好美は心を奪われた。女性に告白されるのも初めてな勇二は、言葉に詰まった。だが、少女のような目つきを見せる好美の姿に本気なんだと思い、決意して勇気を出して言葉にした。 「じ、実はさっき言ったあ、相手と言うのは、よ、好美さんのことなんです。僕も前から、好美さんのことが、すっ、すっ好きでした!でも、こんな頼りない男だから無理だと思ってたんです。こんな僕でよかったら、つ、付き合ってください。」 遂に言えた。勇二の初めてで最後の告白だった。好美は無言で勇二の胸に飛び込んだ。勇二はドキッとしたが、たじろく姿はもうない。強く好美を抱き締めていた。好美の首から香水のいい香りが漂う。好美が顔を上げて、勇二を見つめる。勇二は赤面しながら必死で目を逸らさずにいた。すると、好美はゆっくりと目を閉じた。口づけを求めた。勇二はキスも初めてで映画やドラマのキスシーンを思い返し、顔を斜めにして近付けた。目の前に好美の顔がある。柔らかそうな唇に薄くリップを塗ってある。そして二人は口づけを交わした。風で舞う桜の花びらが二人を祝福しているようだった。
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