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2007年4月1日
「お早ようございます。今日から、こちらでお世話になります勝山勇二と言います。宜しくお願いします」
大手の運輸会社の入社式。低く大声で自己紹介する勇二は、綺麗で真新しい制服姿で社員達の目の前にいた。
年は、二十三で彼の外見は背は高く細身で坊主頭。顔立ちは、ハンサムとは言えない。彼は車を運転するのが好きで高校時代に十八回目の誕生日を迎えたと同時に免許を取り、毎週のようにドライブへ出掛けていた。
高校を卒業して営業関係の仕事に就いたが口下手な性格で、自分に合わないと感じ五年で退社し今の会社に入社した。
そして、勇二の隣にいる同期の女性。彼女の年は、勇二より三歳上の二十六で、外見は勇二と一緒ぐらいの背で、スレンダーで美人だ。
「私も、今日からこちらでお世話になります。名前は近藤好美と言います。宜しくお願いします。」
綺麗で透き通るような声だ。好美は、短大卒業後に実家を出て都会でOLをしていたが、父親を去年亡くし母一人となってしまい、故郷の実家に戻りこの会社を選んだのである。
勇二は、緊張していて目線を床に下げていたが好美の声に反応し、初めて顔を見つめた。
「綺麗な人だぁ。こんな人と家庭を持てたら幸せだろうな。」
勇二は心の中で思った。そして明らかに鼓動のテンポが違う自分がいた。久々に恋に芽生えたのである。勇二は恋に奥手なタイプで、女性と話すだけで上がってしまう。彼は何回か恋に墜ちたが、この性格が原因で相手に気持ちを伝えることが出来なかった。好美も勇二の姿を見つめてはいたが、特別な感情は生まれなかった。後に、この二人を待ち受ける運命を知らずに勇二と好美の入社式を終えた・・・。
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