悪夢の宣告

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好美が目覚めると朝だった。好美は、会社を退社した。そして勇二に別れを告げるために電話で、二人の行きつけの喫茶店で待ち合わせた。 勇二が喫茶店に入ると、いつもの席に好美はいた。しかし、いつもの笑顔はなく深刻さを物語っていた。 「勇二さん、呼び出してごめんなさい。昨日、田辺先生から聞いたの病気のこと。勇二さん・・・私は、これから生きていく中で、忘れたくない記憶や思い出を失っていくの。あなたと作ってきた思い出も消えていく。勇二さんを苦しめたくないの。だから、別れてほしい。おとといの約束守れなくてごめんさない。私なんかと居ても幸せにはなれないよ。」 好美は離れたくなかったが勇二にとっての幸せを考えての結論だった。勇二は、好美の言うことを予想はしていた。昨日、徹夜で悩み確たる決意をしていた。 「そう言うと思ったよ、好美さん。だけど、僕はそれでも好美さんと一緒に居たいんだ。好美さんが僕の全てなんだ。逢ってから今までも、これから死ぬまでずっとね。僕が好美さんを守る。たとえ、好美さんが僕のことを忘れても思い出させる。病気なんかに僕達の愛が負けることなんかない。必ず記憶が甦ると信じてる。」 好美は、勇二の言葉に自分が愛した人が、この人で良かったと実感した。勇二はポケットから小さな箱を出して好美に渡した。好美が開けると指輪が入っていた。ダイヤの指輪だ。 「好美、結婚しよう。」 好美は悩んだ。勇二の姿を見つめ悩んだ。するとあることに気付いた。 「勇二さん、いつものネックレスは?」 勇二は気に入っているネックレスを、いつもしていたのに今日はしていなかった。 「その指輪に付いてるダイヤ、あのネックレスに付けてたものなんだ。将来、大事な人に俺の気持ちを込めたダイヤを送りたくて。その相手が好美で良かった。だから結婚してほしい。」 好美は泣きながら勇二に抱きついて短く言った。 「宜しくお願いします。」短くも勇二の愛に応えたい気持ちが溢れているように聞こえた。二人は籍を入れ、同棲生活を始めた。
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