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2008年1月1日
二人は、幸せな年を越し新たな年を迎えた。好美はときたま、部分的に記憶を忘れたりしていたが、勇二が何とか記憶を呼び起こすという繰り返しだった。二人は初詣に行き、今年の豊富を祈った。二人が心で祈った願いは共に、
「この幸せがずっと続きますように・・・」
二人は出店を見て回ったりしていた。すると、好美は急に怯えだした。
「こ、ここは何処なの?」まるで幼い子が迷子になった姿みたいにキョロキョロしだした。勇二は、
「好美さん、大丈夫だよ?僕がいるじゃないか。」
しかし、好美の返答に谷のどん底に落とされた。
「あなたは誰?誰か助けて!」
「好美、何を言ってるんだ。僕だよ?その左手につけてる指輪をみてごらん?」しかし・・・
「これは、自分で買ったものよ。あなたなんか知らないし。しつこいと警察呼ぶわよ?」
遂に悪魔の病気が顔を出した。好美から勇二の記憶を持ち去ったのだ。
「いいから帰ろう好美。ここにいない方がいい。」
必死に手を引っ張る勇二を拒む好美の姿を見た参拝客が、
「貴様!なにしている!やめないか!」
勇二は顔を殴られ体勢を崩し倒れた。勇二は、全てを失った絶望感と殴られた怒りで我を失った。
「その人は俺の女だ!俺の女なんだぁ!」
勇二は殴った相手を殴り返し、馬乗りになり殴り続けた。しかし、駆け付けた警察官によって捕らえられて、傷害の現行犯で逮捕された。好美はショックで倒れ救急車で病院に運ばれた。幸いだったのは田辺がいる病院に運ばれたことだった。勇二は、取り調べを受けて真実を話したが分かってもらえず、牢屋に入った。勇二は、泣いた。全てを捧げてきた人に、あの言葉を聞いてショックが大きすぎた。一週間後、田辺が面会にきた。勇二の痩せ細った姿を見ても同情はしなかった。
「勇二、聞け。好美さんの病状は進行している。もう、お前の記憶が戻ることは無理だ。後は俺に任せろ?施設にいれるしかない。いい施設に入れてやるから。」
その言葉に怒りを覚えた勇二は、
「田辺。俺がここにいる間は頼む。しかし、出たら迎えに行く。お前みたいな論理的主義者に任せても仕方ない。絶対に記憶は戻る。」
田辺が口を開こうとすると勇二は面会室から出ていった。
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