引き裂かれた二人

2/4
前へ
/33ページ
次へ
2008年1月1日 二人は、幸せな年を越し新たな年を迎えた。好美はときたま、部分的に記憶を忘れたりしていたが、勇二が何とか記憶を呼び起こすという繰り返しだった。二人は初詣に行き、今年の豊富を祈った。二人が心で祈った願いは共に、 「この幸せがずっと続きますように・・・」 二人は出店を見て回ったりしていた。すると、好美は急に怯えだした。 「こ、ここは何処なの?」まるで幼い子が迷子になった姿みたいにキョロキョロしだした。勇二は、 「好美さん、大丈夫だよ?僕がいるじゃないか。」 しかし、好美の返答に谷のどん底に落とされた。 「あなたは誰?誰か助けて!」 「好美、何を言ってるんだ。僕だよ?その左手につけてる指輪をみてごらん?」しかし・・・ 「これは、自分で買ったものよ。あなたなんか知らないし。しつこいと警察呼ぶわよ?」 遂に悪魔の病気が顔を出した。好美から勇二の記憶を持ち去ったのだ。 「いいから帰ろう好美。ここにいない方がいい。」 必死に手を引っ張る勇二を拒む好美の姿を見た参拝客が、 「貴様!なにしている!やめないか!」 勇二は顔を殴られ体勢を崩し倒れた。勇二は、全てを失った絶望感と殴られた怒りで我を失った。 「その人は俺の女だ!俺の女なんだぁ!」 勇二は殴った相手を殴り返し、馬乗りになり殴り続けた。しかし、駆け付けた警察官によって捕らえられて、傷害の現行犯で逮捕された。好美はショックで倒れ救急車で病院に運ばれた。幸いだったのは田辺がいる病院に運ばれたことだった。勇二は、取り調べを受けて真実を話したが分かってもらえず、牢屋に入った。勇二は、泣いた。全てを捧げてきた人に、あの言葉を聞いてショックが大きすぎた。一週間後、田辺が面会にきた。勇二の痩せ細った姿を見ても同情はしなかった。 「勇二、聞け。好美さんの病状は進行している。もう、お前の記憶が戻ることは無理だ。後は俺に任せろ?施設にいれるしかない。いい施設に入れてやるから。」 その言葉に怒りを覚えた勇二は、 「田辺。俺がここにいる間は頼む。しかし、出たら迎えに行く。お前みたいな論理的主義者に任せても仕方ない。絶対に記憶は戻る。」 田辺が口を開こうとすると勇二は面会室から出ていった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加