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勇二は一年後、裁判で執行猶予が付き釈放された。勇二は、この一年間ただ一つのことだけを想い孤独で閉ざされた部屋で耐えてきた。勇二は、直ぐ好美のいる田辺の病院へと向かった。ただ会いたいという一途な想いだけが勇二を突き動かしていた。待合室で待っていると田辺が来た。
「よう、一年ぶりだな。だいぶ痩せたな。」
勇二は、自分のことなんかどうでも良かった。
「再会を喜んでなんかいられない。分かるだろ?この一年どんだけ待ったことか。会わせてくれ、好美に。どこにいるんだ。」
田辺は、勇二のことを理解してはいるが、なだめるように言った。
「なあ、勇二。好美さんは、一年前よりひどくなっている。お前が引き取って面倒を見るなんて言っても一人じゃ無理なんだよ。好美さんの為にも施設で過ごさせたほうがいい。面会だっていつでもできるんだ。お前が言ってた奇跡を信じるなら毎日会いに行ってやればいいだろ。」
勇二が下を向いて黙っていると、田辺は一枚の紙を渡した。
「そこに書いてあるのが好美さんのいる施設だ。まあ、俺は止めはしないが会って自分で決断するんだな。じゃあ、俺は仕事に戻るわ。」
帰っていく田辺の後ろ姿を見て勇二は、
「田辺!ありがとな。」
田辺は振り返らず手を挙げて診察室に戻っていった。
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