18人が本棚に入れています
本棚に追加
勇二は暗闇にいた。後ろの方から好美の声がした。振り返ると、光に輝く風景に桜が周りを囲んでいた。勇二を若い頃の姿をした好美が迎えにきた。
「勇二さん、行こ。二人の空白の時間を過ごしに。」勇二はうなずいて二人は、桜の中へと消えていった。そう。二人は、天へと旅立ったのだ。神は勇二の純粋さに、ごほうびを与えたのだ。看護婦がシートに寄り添う二人を見つけると、皆を呼びに行った。駆けつけた男は言った。
「奇跡が起こったか。勇二。良かったな、神様に逢ってたら感謝しとけよ。」
田辺だった。二人を見た瞬間、天に旅立っていたと直感した。なぜなら、二人は寄り添うように手を繋いでいたからだ。二人とも安らかで幸せそうだった。田辺は、夜空を見上げながら
「勇二、好美さん幸せにな。俺もすぐに後をおうがな。」
この二日後、二人は一緒の墓に入った。二人が天に旅立っていった奇跡の場所は、「恋桜」と呼ばれて若いカップルのデートスポットになっている。
最初のコメントを投稿しよう!