二章 急接近

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4月12日 この日は、勇二にとって待ち侘びた日だった。憧れのマドンナの好美とのドライブの日だ。勇二は綺麗好きで洗車は毎日のようにしていたが、この日は何回もチェックした。彼は愛車に語りかけた・・・ 「お前もドキドキしているか?初めて助手席に女性乗せるもんな?分かるよ~。運転手の俺ですら緊張してるからなぁ・・・」 愛車のワックス掛けも終わり時計に目をやった。 「待ち合わせには時間があるな~・・・喫茶店で暇を潰すか。」 勇二は自分のアパートから近い喫茶店へと入った。すると、勇二は目を疑った。いつもの自分が座るテーブルに好美がいたのだ。しかも勇二が好美の私服を目にするのは初めてで、いつもとは違うイメージに、ドキドキした。淡いピンク色のワンピースに白のカーディガンを羽織っている。可愛らしくも大人らしさを出している。放心状態の勇二にマスターが、 「勇ちゃん?何つったってるんだ?あっ定位置に女の子が座ってるなぁ。残念だなぁ。」 慰めるマスターに勇二は、 「違う、違う、いいんだよ。他の席に座るから。」 勇二が席に向かうと、 「あっ勝山さ~ん!勝山さんも喫茶店に来たんですか~?」 好美は勇二に気付いた。勇二は緊張しながら震える足を気にしながら好美の向かいに座り話し掛けた。 「近藤さんがいるとは思わなかったよ。僕は待ち合わせに余裕があったから、ここに寄ったんだ。迎えに行く手間がなくなったよ。ハッハッ。」 好美を、正面から見るのが初めての勇二は、その美しさに見惚れそうになり、何度も心の中で冷静さを保とうとしていた。そんな時、好美の隣に大きなトートバッグを見つけた。 「近藤さん、そのバッグには何が入ってるんですか?気になったんで・・・」好美の答えに期待しながら勇二は返事を待った。 「お弁当ですよ?桜って言ってたから、お花見気分で食べたいなって思って!もちろん、勝山さんの分も作ってありますから!」 ど真ん中の答えに勇二は心の中で叫んだ・・・ 「ヤッター!!手作りだよ手作り!!しかも二人きりの花見だし・」
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