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その後、度々襲撃をくらいながらも2人は漸く王都から抜け出した。
王都の時計塔の鐘が鳴り響き住民に危険を知らせている。
「……まあ、一旦は大丈夫みたいだな
平気か、ミリア?」
ローグはあっけらかんとした様子でミリアに声を掛けた。
ミリアは大丈夫という言葉に安堵したのかその場で座り込む。
「はぁ……はぁ……ふぅ~……
貴方は一体何者ですか?」
ミリアは息を調えた後、顔をあげローグに訊ねた。
ローグは頭を掻き困った様子を見せたが、直ぐに口を開いた。
「……元・アルフェス帝国騎士団第三師団魔物迎撃部隊師団長
通称・銀龍のローグ
俺はアルフェス帝国からの亡命者だ」
ローグはすらすらと嘗ての職務から今の身の上までを包み隠さずミリアに伝えた。
アルフェス帝国騎士団とは謂わばこの世界唯一の軍隊的警察組織であり当然優れた実力者しか組織に入れない。
「……銀龍……
貴方が……私の命の恩人……」
ミリアはそう呟き、ローグの手を掴んだ。
そして強く握り締めた。
「……ん? どうした?」
「……今から4年前……
私は1人の騎士に命を救われました いつか帝都に赴き恩をお返ししたいと思っておりました しかし、いつまでも両親の許しが出ずにカムカラの森の傍の小さな村、ミラム村にて毎日の貴方の御武運と健康を御祈りして」
「長い 要約しろ」
「貴方様に恩返しをするために、天龍狩りから逃れてきました」
ローグはミリアの話が延々と続きそうな感じがして途中で遮り簡潔に話すように言った。
そして、1秒も考えることなく言い放つミリア。
ミリアは至って真面目である。
「それはそれはご苦労なことだな……」
ローグは半ば驚きながら呆れ返った。
天龍狩りとは創造の神に使役する神官を対象とした傭兵軍団であるデスペルゴッドのテロ活動のことをさす。
目的となった神官が住む町の人や家族は例え赤子だろうが手にかけるという残虐な活動だ。
生き残りがいたとは驚きである。
「私と貴方が再び出逢ったのは正に運命!
神のお導きです……」
そう言ってミリアは手を重ね祈りを捧げ始めた。
ローグは門の方へ体を向け刀を抜いた。
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