第1章: 騒動

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怒り狂うベヒモスが2人目掛けて突進してくる。 2人は同時に左右に跳び避けローグはすれ違い様に左足を斬り捨てた。 ベヒモスは呻き声をあげるが瞬時に足は再生しローグに向かって突進する。 ローグは跳び上がり突きだしている角の生えた額目掛け踵落としを食らわせその反動で大きく飛び退いた。 ベヒモスの頭にますます血が上りスピードをあげローグに突進してくる。 ローグはその額に刀を降り下ろした。 その刀は頭を振るった時の角に阻まれ弾かれローグは舌打ちをして顎を蹴りあげベヒモスの下をくぐり抜ける。 ベヒモスは勢い余りローグが後ろに回ったことに少しの間、気付かず前方5m近くつんのめった。 ベヒモスは直ぐに方向転換をしてローグに向かって突進し始めた。 「……ミリア!」 「準備万端です! 光纏う天の剣!」 ローグの呼び掛けにミリアは剣を天に翳した。 その剣に白い光が纏われる。 雄叫びをあげ迫るベヒモスにローグは跳びかかった。 「ローグさん!」 「くらいな! カタラクトブレード!」 ミリアはそのローグに目掛けて光纏う剣を投げ渡し、ローグはそれを掴み刀と併せベヒモスの頭に降り下ろす。 刀と剣はベヒモスを頭から真っ二つに切り裂きローグはベヒモスの後ろに着地した。 ベヒモスの体は左右に分かれそれぞれ地面に崩れ落ち黒い煤となりザビのもとへ飛んで行く。 「……へぇ~ 仮にも兵器をこんなにあっさり倒すのか~ これは面白い!」 ザビはその黒い煤の塊をを握り潰しまた高笑いをし始めた。 ちょうどその時、門から松明をもった数人の警護団の姿が現れた。 「王都襲撃犯! お前を拘束する!」 その警護団はザビを取り囲みそう叫んだ。 ザビは相変わらずニヤニヤと笑みを浮かべていたがやがて2人に向かってこう言った。 「……次は完成形を見せてやるからお楽しみに~」 そう言ってザビは懐から小さな白い玉を取りだし地面に投げ付けた。 するとその玉から閃光が放たれ煙が巻きあがった。 少し離れていたローグ達ですら巻き込む広範囲の煙玉が晴れた時にはザビの姿はなくなっていた。 「いない!? 探せ! 探すんだ!」 隊長らしき男が部下に命令を下す。 2人はその様子を複雑な気分で見つめていた。 「……ここに居れないな……」 ローグはザビの言葉を思い返し小さく呟いた。 ミリアはその呟きを静かに聞いていた。
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