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ローグは干し肉や干物が入った紙袋と果物や野菜が入った紙袋を石畳に置き中央時計塔が真正面に聳える噴水の縁に腰を掛けていた。
時計塔に設置された3つの鐘は近年取り替えるらしいが今のままでも十分な金の輝きを放っている。
「……あいつらどうしてんだろうな~……」
その鐘を見ながらローグは呟いた。
嘗ての仲間に対して呟いたものだがもうかれこれ2年以上連絡を取っていない。
溜め息を吐いてローグは伸びをした。
その時、視界の端を茶色のローブを羽織った人物が横切った。
その人物は何かに追われているように挙動不審になっており常に周りを見渡している。
「……なあ、なにし!?」
嘗ての癖というか職業病というかローグは紙袋を抱えその人物に歩み寄り後ろから声を掛けたが、語尾がはねあがった。
その人物は腰に携えた剣でローグへ切りつけたのだ。
ローグは紙袋を切られながらも宙返りをして剣を避ける。
「……ふぁ~ あぶねー……」
「外しましたか……
でも、生きるため!」
見事な回避を見せたローグに素早く突きを放つローブの女性。
ローグの目付きは変わり最初の突きを避け胴に強烈な蹴りを放った。
女性はその蹴りを盾で防ぎ次々と突きを放つ。
何事かと集まる王都の住民の中に警護団の姿を見たローグは舌打ちをする。
「……厄介だな……」
「止めです!」
女性はローグの余所見をしている顔に目掛け渾身の突きを放つ。
ローグはその迫り来る細剣の側面を手の甲で払いのけ女性の顎を思いきり蹴りあげた。
その際、ローブの奥できらびやかに映える金糸の髪がちらりと見え、女性の体は大きく飛ばされ後ろのカフェテリアのテーブルにぶつかった。
立てないところを見ると気絶しているのだろう。
ローグは額に手を当てた。
「……久し振りすぎて加減し忘れた……」
その呟きは騒ぎが大きくなったローグが買ったものが散らばった中央広場の喧騒に飲み込まれ消えていった。
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