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中央広場の騒動の後、ローグはミリアを宿屋の一室に連れ込んだ。
あの騒動は警護団には“喧嘩”として説明した。
それで目撃者もおり、ややこしくはならなかったのだが、肝心の弁償は何故かシガルがしてくれた。
多分、ローグの財産を考慮してのことだろう。
まあ、とにかくローグは女性を引き取りお詫びとして無料で宿を提供している。
「……はぁ……
顎は割れてないよな……」
金髪の女性の寝るベッドの傍で市で買い散らばったリンゴの皮を剥いているローグがそう呟いた時、女性がいきなりガバッと起き上がった。
そして、ローグを見るや否や直ぐにローグとは反対のベッドの端に移動しローグを睨み付ける。
その姿はまるでローグを敵と見なし抵抗を示していた。
「……殺すなら早く殺してください!
故郷のみんなのように!」
そして、ローグに向かって予想外の言葉を叫んだ。
思いきりこの女性は勘違いをしているようである。
ローグはベッドの傍らに置いてある女性が持っていた剣と盾を投げ渡した。
「勘違いをしてるよ、あんた
確かに蹴り飛ばしたけど、殺す理由はないし」
「嘘です! あなた方は私を追いミラム村から追っかけて来た筈です!」
女性は勘違いをしたまま細剣を引き抜きローグへ向けて突きを放つ。
ローグは隠し持っていた長い刀を鞘に納めたまま振るい細剣を捌き女性の目前に突き付けた。
「……だから、俺が殺す理由はないし、殺す気もない
安心してリンゴでも食え」
ローグは刀の鞘を膝に置き丸テーブルに置いてある皿を女性に渡した。
しかし、女性はまだ疑っているのか、多分、毒が入っているのを怖れ食べようとはしない。
ローグはリンゴの1つを爪楊枝で取り口に運んだ。
「毒なんか入ってない
それにその細剣、大分傷んでるから手入れしてやるよ」
ローグは手を差し出すと女性は細剣を抱えさらに身を引く。
武器を取られると思ったのだろう。
ローグは大変な奴を引き取ったと思い頭を抱えた。
外では太陽が地平線の下に沈み月が顔を出していた。
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