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爆発音に寄せられる住民の波をくぐり抜け南東部を移動する2人。
初対面であるはずのミリアは何故か懐かしさを感じていた。
そして、行き着く1つの記憶。
『ったく、世話のやける女だ
お前のような弱虫がこんな森に入るなんて信じられねぇよ』
血で濡れた手で幼き頃のミリアの手を引く1人の青年。
顔は靄がかかったように思い出すことはできないが、この人といるとあの頃感じた安心感を覚えたのだ。
しかし、自分の足にかすったボウガンの矢の音で現実に引き戻される。
「シンドラさん、あなたまで逃げることは!」
「ローグだ!
それに! 退けよ! 裂破衝!」
人波から抜け出した2人を待っていたのは黒のローブの者。
ローグはミリアから手を放し、長刀を引き抜き×印に切り裂いた。
血の代わりに黒の煤が舞い散り、形を失う。
「もう手遅れだ」
遅れたようにそう付け加え、長刀を鞘に納め再びミリアの手を握り締め、走り出す。
「お強いのですね、ローグ様!」
「まあな! だが、ローグ“様”は気に入らねぇっと!」
ローグはミリアを視界の端にいた警護団2人に預け、剣を引き抜いた。
「うわ!? ロ、ローグ!?」
「そいつをちょっと預ける、ぞ!」
ローグの顔見知りのようだ。
しかし、ローグは警護団に顔を向けることなく、路地から降り下ろされる1本の大剣と2本の剣を受け止める。
奇襲にローグは気付いていた。
そして、襲いかかった3人は一旦、ローグから距離を取り通りに姿を現し再び戦闘体勢に入った。
「おい、ローグ
こいつらはいったい……」
「それにこの子は昼間の……」
「説明は後にしてくれ!
とにもかくにも守ってくれればいい!」
尋常ならざるローグの様子に警護団2人は口を閉じ、周囲を警戒し始める。
しかし、当のミリアはポカンと長刀を構えるローグに見惚れていた。
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