第1章: 騒動

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爆発音に寄せられる住民の波をくぐり抜け南東部を移動する2人。 初対面であるはずのミリアは何故か懐かしさを感じていた。 そして、行き着く1つの記憶。 『ったく、世話のやける女だ お前のような弱虫がこんな森に入るなんて信じられねぇよ』 血で濡れた手で幼き頃のミリアの手を引く1人の青年。 顔は靄がかかったように思い出すことはできないが、この人といるとあの頃感じた安心感を覚えたのだ。 しかし、自分の足にかすったボウガンの矢の音で現実に引き戻される。 「シンドラさん、あなたまで逃げることは!」 「ローグだ! それに! 退けよ! 裂破衝!」 人波から抜け出した2人を待っていたのは黒のローブの者。 ローグはミリアから手を放し、長刀を引き抜き×印に切り裂いた。 血の代わりに黒の煤が舞い散り、形を失う。 「もう手遅れだ」 遅れたようにそう付け加え、長刀を鞘に納め再びミリアの手を握り締め、走り出す。 「お強いのですね、ローグ様!」 「まあな! だが、ローグ“様”は気に入らねぇっと!」 ローグはミリアを視界の端にいた警護団2人に預け、剣を引き抜いた。 「うわ!? ロ、ローグ!?」 「そいつをちょっと預ける、ぞ!」 ローグの顔見知りのようだ。 しかし、ローグは警護団に顔を向けることなく、路地から降り下ろされる1本の大剣と2本の剣を受け止める。 奇襲にローグは気付いていた。 そして、襲いかかった3人は一旦、ローグから距離を取り通りに姿を現し再び戦闘体勢に入った。 「おい、ローグ こいつらはいったい……」 「それにこの子は昼間の……」 「説明は後にしてくれ! とにもかくにも守ってくれればいい!」 尋常ならざるローグの様子に警護団2人は口を閉じ、周囲を警戒し始める。 しかし、当のミリアはポカンと長刀を構えるローグに見惚れていた。
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