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「サキ…。」
フリーの囁き声が聞こえる。
サキが恐る恐る目を開くと、そこには喉元に剣先を突き付けられて、身動きがとれなくなった男の姿があった。
「…くっ。」
「残念だが、此処までの様だな。このまま大人しく引き下がれば、今回の事は見逃そう。
まだ抵抗しようというのなら、私は容赦はしない。」
「…、下賎の者が…。」
「そうか…。」
男の返事を聞いたヒバリは、剣の柄を使い素早く男の手からナイフをたたき落とすと、もう一方の手で男の顎を強打した。
男はのけ反る様に後方に吹っ飛び、「ぐぇっ」っという情けない声を出すと気を失ってしまった。
「ハァ。…サキ、フリー、怖い思いをさせて済まなかった。」
「ヒバリさん…ありがとうゴザイマス…。」
サキは未だに恐怖が消えず、震える声で礼を言った。
ヒバリは苦笑いをする。
「ヒバリさん。この人はどうするんですか?」
フリーが尋ねる。
ヒバリは少し考え込み、
「目を覚ますと厄介だな…取り敢えず…。
フリー、そこのシーツ取ってくれ。」
フリーはベッドのシーツを剥ぎ取り、ヒバリに渡す。
シーツを受け取ったヒバリは、シーツで男を縛り、身動きの取れないようにしてしまった。
「こんなもんかな?」
ヒバリが男を縛り上げた直後、サキの悲鳴を聞き付けた、二人の衛兵が駆け付けてきた。
ヒバリが事情を話すと、衛兵は男を担ぎ上げて去って行った。
運ばれていく男の姿は、まるで白くて大きな芋虫のようだった。
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