~女王との謁見~

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ルパに促されサキとフリーは外へ踏み出す。 外では、エリの家を大勢の群衆が取り囲んでいた。   「あっ!!」   群衆の一画から声が上がる。よく見ると、昨日サキ達を追い回した男の顔だった。 男は関を切ったように喚き立てる。   「こんな所に隠れていやがったか!!旅人よぉ!!…いや、悪魔の遣い、ザザ・アクめ!!」   「何!?あいつらが噂の旅人か?」   「ルパ様!!悪魔の使徒に断罪を!!」   「消えろ、キエロ!!旅人なんて死ねばいい。」   群衆から一斉に怒りの声が上がった。サキはあまりの恐怖に足がガクガクと震え、今にも倒れそうな状態だった。       「静まらんかぁ!!!!!!」   それを鎮めたのは、ルパだった。ルパが群衆を一喝すると、喚き立てていた群衆がピタリと口をつぐんだ。 ルパは続ける。   「誇り高きアンカ族、誇り高きソレブリアの民が、これしきの事でうろたえるとは何事か!!情けなくて、涙がでるわ!!!   過去に皆が経験した恐怖、絶望は分かる。 しかし、恐怖に駆られ、無関係な旅人にまで憎しみをぶつけるなど… 誇り高き我等にはあってはならぬ事だ。」   ルパが群衆を叱咤すると、群衆からは鳴咽が漏れ始めた。 サキ達に罵声を浴びせる人はいなくなっていた。   「…ソレブリアの民よ…心を強く持ち、先立った者達に恥じぬよう…強く生きよ。 老神も陛下も、ただただそれだけを願っているのだ…。」   狭い通りは、人々の啜り泣く声で満たされた。サキは込み上げる哀しみと、切なさに胸が締め付けられる。   「ゆくぞ。」   ルパが歩きはじめた。サキとフリーも逃げるように、その場を離れる。 背後の群衆の啜り泣く声を聞きながら、サキ達は街の中心…天に向かってそびえ立つ尖塔…クリスタル・パレスに向かう。
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