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「陛下、旅人をお連れいたしました。」
ルパとエリがひざまづき、サキとフリーもそれに倣い、ひざまづいた。
「クリスタル・パレスへようこそおいで下さいました。わたくしが、この国を統治しております…、ゾフィです。
皆さん、顔を上げて下さい。」
凛とした女性の声が響く…サキはその声に少し驚いた。
顔を上げて女王を見上げると、十代後半位の女性…いや、まだ、少女と言える位の年齢の女王が玉座に座っていた。
『…この人が、女王陛下…想像してたよりずっと、ずっと若い。』
サキがぼうっと若い女王を眺めていると、女王は少し顔を歪めて、謝罪の言葉を口にした。
「幼き旅人…サキ、そして亜人種の少年フリーよ、今回の騒動については、エリから全て聞いております。
…民の不祥事は、わたくしの統治者としての力量不足が招いた事…どうか民を許してあげて下さい。」
女王はサキ達に対し、深々と礼をする。
サキ達は女王が頭を下げるという異例の事態に、あたふたと戸惑った。
「あ、あの。そんなに謝らなくても平気ですから。
それどころか、エリさんやルパさんのお陰で助かりましたし…だから、その…とにかく謝らなくていいんです。」
緊張と戸惑いがあったが、サキは自分の素直な気持ちを女王ゾフィに伝えた。
「サキ…貴女は心優しいのですね。…城下であれだけの体験をしたというのに…。」
「最初は戸惑いましたし、怖くて怖くて堪りませんでした。だけど、旅人の…ミツルっていう人がした事を考えると…今は、完全には恨む事はできません。」
サキが意見を述べると、ゾフィは口をつぐんでしまった。
数秒間の沈黙の後、ルパが重い口を開いた。
「ミツル殿か…、あの惨事を引き起こしたのは、確かに彼だったが、我等も少なからず関係しておるのだ。
彼だけを責める訳けにはいかぬよ。」
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