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「!?」
サキは目を見開く。隣に控えていたフリーとエリも、思わず顔を上げる。
「エリよ、お主も旅人に関わった以上、知る権利がある。全て包み隠さず教えよう。」
ルパはエリに話しかけた。
「はい。」
「さて、何処から話すべきか…、
皆も知っての通り、5年前に二人の旅人が現れた。ミツル殿とワタル殿…二人は宝玉を探し旅をしておった。最初にこの北の帝国に現れたのはミツル殿だった。」
広い謁見の間には、ルパの話す声以外に何も聞こえない。重苦しい程の沈黙があった。
「ミツル殿は強大な魔力を持っていてな、消影の魔法で城に忍び込みおった。
先帝のガマ・アグリアスⅦ世が言うには、夜中気付いたら枕元に立っていたとか…。
私は当時"シグドラ"という皇帝直属の特殊部隊に所属しておったのだが、それ以来、ミツル殿の監視役としてミツル殿を監視することとなった。」
シグドラ…また新しい単語だ。サキは頭の中にその名前を刻み込んだ。
「ミツル殿は最後の宝玉が、此処…クリスタル・パレスにあることを知り、現世の技術を提供する代わりに宝玉を譲れ…と交渉してきた。
しかし、我等にもその宝玉は大切な存在だったのだ。」
ゾフィがその後を継ぐ。
「宝玉は"闇の宝玉"と呼ばれ、この世界と、恐ろしき魑魅魍魎のうごめく魔界を繋ぐ"常闇の鏡"を封じるために使われていました。」
「無論、闇の宝玉の在りかが一般に知られ、悪用されぬよう、宝玉自体にも強力な結界が張ってあった。」
「そのため、ミツル様は足止めを受ける形となり、しばらく、このクリスタル・パレスに滞在することとなりました。
その時のミツル様が、どこか寂しそうで、焦っていたように思えてならず、わたくしは少しでもミツル様のお力になりたいと考えておりました。」
ゾフィは俯いた。微かにその睫毛が震え、今にも泣き出してしまいそうだ。
その姿から、女王ゾフィの苦悩がみて取れる。
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