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ヒバリに案内され、サキ達は客室へとたどり着いた。
客室の中では暖炉が赤々と燃え、暖かい空気に満ちていた。
…きっとヒバリが用意したのだろう。
部屋の中は、ベッドとテーブルが置かれただけのシンプルな構造だったが、その一つ一つには精巧な細工が施されていた。
「サキ、フリー。私は滞在中に必要な物を揃えて来るわね。」
「はい。ありがとうございます。」
「じゃあ、また後でね。
-サキ達をお願いします。」
サキ達とヒバリにそう言うと、エリは部屋を後にした。
安心したからか、サキとフリーは疲れを感じて椅子に座り込む。
「宜しければ、コレをどうぞ。」
ヒバリはサキ達の前に焼き菓子を差し出す。
先程までは緊張からあまり感じていなかったが、突然空腹が襲う。そろそろと手を伸ばし、焼き菓子を口に運ぶ。ふわっと香ばしい香りと共に、上品な甘さが口いっぱいに広がる。
「美味しい!!」
あまりの美味しさに、サキは思わず声をあげた。サキが言うと、ヒバリは嬉しそうに笑った。
「だろっ!!この城の料理長が作る焼き菓子は美味いんだ!!…あっ」
「いけね!」とヒバリは頭を掻いた。さっきまでと打って変わったようなヒバリの態度に、サキ達は驚いた。
「失礼致しました。」
ヒバリは小さな声で謝罪すると、恥ずかしそうに俯く。一瞬の間の後、室内は笑い声に包まれた。
「アハハハ、ヒバリさんって面白いですね。」
ヒバリも楽しそうに言う。
「実は俺、農民の出だから、畏まったのって苦手なんだ。これからはこんな感じでいいかい?」
「アタシもその方がいいです。」
「じゃあ、改めてよろしくサキ、フリー。」
三人はしっかりと握手を交わした。
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