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それからしばらくの間、サキ達は焼き菓子をほお張りながら、様々な事を話した。
ヒバリは現世の事について興味津々な様子で、サキが語る現世の話しに、まるで少年のように瞳を輝かせていた。
また、ヒバリも自分の生まれた村の話などを聞かせてくれた。
フリーは、記憶喪失のためどちらかと言うと聞き役になってしまっていたが、三人はすっかりと打ち解けていった。
「…ハハハッ。現世って面白そうだな。その…クルマとかヒコーキ…だったかな?一度乗ってみたいよ。」
サキからすれば、車も飛行機も無いということのほうが驚きだった。
「この国では、移動するのに馬車を使っているんですよね。」
「…バシャ?………あぁ、ダルババ車かい?そうだなぁ。長距離で荷を扱う業者なんかはよく使うな。
けど、ちょっとした距離ならウダイを使う。ウダイのほうが機動性がある。
今度、二人を俺のウダイに乗せてやるよ。」
「俺のウダイは利口で勇敢なんだ!」ヒバリはニカッと笑う。
しかし、その顔が突如強張る。
「?……ヒバリさ…」
「シッ。静かに。」
サキの声を遮るヒバリの顔は、さっきまでの楽しげな表情から、軍人の顔へと変わっていた。
やがて廊下から荒々しい足音が響いてきた。
「サキ、フリー、済まないがベッドの向こうに移動してくれるか?…嫌な感じがするんだ。」
サキとフリーは言われた通りに移動する。ヒバリが椅子から立ち上がった時、勢い良くドアが開いた。
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