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その後も様々なニュースが報道されていたが、マーズの耳にはあまり入っていないようだった。どこか遠くを見つめるような目をして考え込んでいるマーズを尻目に、レックスは「ちょっと外行ってくる」と言い部屋を出て行ってしまった。
そんなことを気にも留めずに考え事をずっと続けていたマーズだったが、ふと自分しか部屋にいないことに気づいた。どうしようかと考え、1人で部屋にいてもする事がないし、体がまだ動き足りないと言ってる気がしたのでどこか動ける場所を探すことにした。椅子からよいしょとご老人みたいなことを言いながら立ち上がるとそのまま部屋を出て行った。
女子寮から少し離れた場所にある小さな広場のベンチに1人の少女が腰を掛けていた。
「♪」
少女はこんな天気の良い日なのだから外で読書でもしようかなと考えて、どこか良い場所はないか探していたところちょっとした茂みの奥に小さな広場があることに気づき、そこに居座っていたのだった。
少女が読んでいる本の表紙にあたる部分には、〇〇〇の騎士と題名が書いてある。本の中身は1人の少女が青年騎士と出会い様々な試練を乗り越えて結ばれるという王道の乙女チックな内容であった。良い天気の下ベンチで夢中になってその本を読んでいると、ふと広場の横にある道の方から走っている足音が聞こえてくることに気が付く。
「はぁ…はぁ」
「…」
気になって茂みを挟んだ向こうにある道に近づくとそこからチラッと覗いてみる。
そこには、向こうの道から走ってくるマーズの姿があった。その道はまっすぐに行く道とは別に途中で別れて一周する道があり、そこをマーズはぐるぐると何周もしていたらしく、少女が覗いている前を通り過ぎるとまた曲がりぐるっと一周していた。
マーズはさっきから誰かが自分のことをずっと見ていることに気が付いていた。しかし、害意は感じられないのと、視線を感じる方を見ると見つからないように咄嗟に隠れてしまうためあまり気にせず走っていた。…頭頂部を見ると一目瞭然だったが。
「じー…」
「はぁ…はぁ」
「じー…」
「……チラッ」
「サッ」
「じー…」
「…」
とまあこんな感じのやりとりが延々と続いたので流石に足を止めて、茂みの前で止まる。すると当然視線を投げかけている相手は隠れてしまう。…全然バレバレだけども。もはや見えているので相手の正体を見破っているマーズは茂みへと足を向ける。そこには当然…
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