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「シャル、何をしているんですか…」
「…」
同じ訓練生である少女、シャルがいた。バレていないとは思っていなかったシャルだが、正体までバレているとは思わなかった…まあシャル特有のアホ毛が見えているので知り合いだったら誰でもわかる。ビクッと体を震わせた後、ゆっくりと顔を上にあげる。そこにあるマーズの顏を見るとゆでだこのように顏を赤くし、逃げようと立ち上がってそこにあった木の根に足を引っかけてこける。
「っ…」
盛大にズッコケたシャルは、額を地面に打ち付けその痛さに蹲る。その様子を見て苦笑しながら、涙目になりながら額を押さえて地面に座っているシャルの傍に近寄り、シャルの手を少し退かし額を見る。額は赤くなっており、ちょっと腫れていた。それを見たマーズはシャルの額に手を当てて集中した。すると、マーズの手から蒼色の光が現れ、それがシャルの額の腫れている部分を包み込みゆっくりと治している。
「…」
その様子を目線だけ上にして、俗に言う上目遣いでじっと見つめるシャル。それに気づく様子がないマーズは治療を終わらせると、ふぅと息を吐きシャルを立ち上がらせて広場のベンチへと一緒に座る。だが、特に話すこともない…というか話しづらい。なので当然沈黙の状態が続く…
「ここで何をしていたんですか?」
と思われたが我慢できなくなったマーズは何か喋ろうととりあえずシャルが此処で何をしていたのか聞く。その言葉に「本を読んでいました」と答えると少し恥ずかしそうにしながら、さっきまで読んでいた本をチラッと見せる。
それを見たマーズは「面白そうですね」と言いながらシャルの額を見る。額の腫れは完全に消えていてもう大丈夫そうだ。
自分の魔法技術のレベルが上がっているのを確認したことで少し自分に自信がついた気がする。そう思いもうそろそろ部屋に戻った方が良いかなぁと考え、立ち上がる。
「どうしたの…?」
「そろそろ部屋に戻ろうかなと…」
そのまま行こうとするマーズをシャルは服の裾を掴んで止める。止められたマーズはゆっくりと振り返り、「どうしました?」と尋ねる。シャルは止めてしまったことを少し後悔しつつも、マーズの目を見る。
「少し話したいことがあり…ます」
そう言ったシャルの目には何か伝えるべきことがあるのだと判断したマーズは、ベンチに再び座ることにした。ベンチに座るとそれに合わせてシャルも同時に座る。
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