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「あぁ、そういえば…」
何となく教会にいた頃に、他の子達とは違う視線を感じたことがあったが、彼女だったのかと今更ながらに思い出す。ついでに"あの人"のことも…。
「ははは…」
また軽く苦笑しつつ、写真をポケットから出す。写真を見ると、少年が母親であろう女性と手を繋いで笑っている。
「この写真がまだあったなんて………母さん…父さん…」
そう…写真に写っていたのは母親と自分だった。まだ幼い頃…故郷を失う少し前に父さんが撮ってくれた、たった1枚だけ残った楽しい思い出だった。
「…」
少しだけ思い出に浸りながらも、心の奥には怒りと憎しみといった感情が渦巻いていた。初めて己の中のそれを認識した時、少年は復讐を誓った。改めて己の中のそれを確認したマーズは、一刻も早く怨敵を見つけ出すことを心に誓った…。
部屋に戻ると、レックスとヴェルドラが帰ってきていた。2人とも各々自由にくつろいでいる様子だった。特にレックスはテレビを見ながら、自前のマッサージチェアに座っていた。
「よっ、おかえり」
「ただいま」
「…」
レックスとは軽く挨拶をするが、ヴェルドラは言っても返さないので止めた。そのまま部屋へと入ると、レックスが話しかけてくる。
「どこいってたんだ?」
「ランニングですよ。」
レックスはふーんと応えたあと興味がなくなったのか、点いているテレビに視線を戻した。
「…」
今日は訓練がない日なのですることもないなと思い、少し疲れたので仮眠をとることにした。ベッドに寝転がると、ポケットからぐしゃぐしゃにならないように机の引き出しに写真をしまう。
「…」
ふとテレビを見ると、また朝やっていたニュースが流れていた。また同じかと思い、視線を外そうとすると、新しい情報が入ったらしく慌ただしい現場の映像が映った。
「ただいま入った情報によると、一連の事件で現場から強奪された魔道書と関連する物を、襲撃したグループが奪い逃走したとのことです。」
すると一部交戦中だった時の映像が流れる。そこにはモザイクがかっている為か、複数の人物がいるようだがよく見えない。
「… っ…この紋章…」
交戦時の映像が切り替わり、画面に映った書物を見た瞬間、何かが自分の中で反応した気がする。
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