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「いいか、喧嘩っつーのはただ殴ったり蹴ったりすりゃ良いんじゃねぇんだよ」
「あ゛ぁ? いきなり説教かよ!?」
「その通り。わざわざこの俺、ユウジ様がケンカのやり方について教えを説いてやってんだ。ありがたく思え」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!! いちいちムカツク野郎だな! てめぇなんぞ捻り潰してやるぜ!!」
そう言い放つとその大きい体を彼――ユウジ君に向かって突撃していった。その姿は荒ぶる獅子というよりも闘牛場の牛を連想してしまう。
猪突猛進、頭を低くしてまっすぐタックルをしてくる不良を一瞥して呆れたように首を振ると――――
「どっせい!!」
片足で不良の動きを止めた。しかもその片方だけの足をまったく動かさず、涼しい顔をしながら踏んでいる頭を呆れと蔑みを混ぜたような目で見ている。
「なっ!? そんなバカなっ!!」
「バカはキサマだ。捨て身のタックルなんてそんなもん、最近は幼稚園児のケンカでも見ねぇぞ?」
「あっ、ありえねぇ!! この俺がこんな貧弱な野郎の足一本で!?」
「はぁ~……だからこんな筋肉バカは嫌なんだよ。力さえありゃ何でも出来ると勘違いしてんだから」
「うっ、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
今になって自分がどれだけ危険な人物に手を出してしまったのか理解したように不良がメチャクチャに暴れだした。
腕を振り回しても全く届かず、その様子はユウジ君の顔をさらに不機嫌にさせるのに充分だった。
「…………ちっ、見苦しいんだよ! だから頭を使えって――――」
「ぐあっ!?」
右足が唐突に離されたせいでバランスが崩れる不良。それを見越したかのように軸足だった左足を回転させ、一気に相手を蹴り上げる。蹴り上げられた不良は無理やり軌道を変えられ、立つようになって少し浮いていた。
そしてその不良に向かってユウジ君は――
「――――言ってんだろうがっ!」
地面にめり込むほど脚を踏み込み、浮いた不良にヘッドバット――頭突き――をかました。………………って
「頭ってそっちの意味なんだ!?」
僕が叫ぶとほぼ同時に不良が地面へめり込む音が周りに響き渡った。もうもうと煙が立ち込める中、ユウジ君の目の前には小さな――と言ってもそれなりに大きいのだけど――クレーターが出来上がっていた。
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