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「へっ、見かけだけで判断するからこうなるんだよ。ちっとはそのスカスカの脳ミソに叩き込んでおく事だな」
気絶して白目になっている不良へそう呟いた後に「んあ~」と声を出して伸びをすれば、バキバキと小気味良い音が全身から響く。ユウジ君がぐるぐると腕を回したりしていると野次馬だった生徒達がざわざわと騒ぎ始める。
「おい、ユウジってもしかして『ハンマーヘッドのユウジ』か!?」
「げっ、マジかよ! 喧嘩させたら負け無し、怪我無し、容赦無しの三拍子揃ったやつなんだろ!?」
そんなスゴい人なんだ…………。尻餅をついたまま、ふとそんな事をのんびりと考えてしまう。
でもそんな僕の考えとは裏腹に周りの声は徐々に棘を帯び始めた。
「うっわ~、それって最悪じゃね?」
「絡まれないように気をつけなきゃ……」
「バカ、気をつけても八つ当たりされたら終わりじゃない」
「でも、貴族の落ちこぼれ息子がいったいどうやってこんなところに入っ――――」
喋っていた生徒の1人が蛇に睨まれた蛙のように怯えて口を閉ざす。視線を辿れば、ユウジ君がつり上がった三白眼をギョロリとその生徒に向け、ナイフのように鋭い視線を投げ掛けていた。
うわぁ、あれは絶対怖いよ。
「クソ親父の話を二度と俺の目の前で口にするな。分かったか?」
「あ、あぁ……」
ユウジ君が問いかけると、生徒は戦々恐々とした様子で顔を青ざめさせながら首を縦に振る。それはもう水飲み鳥のように。
でも何か気にくわなかったのかずんずんと生徒に近づくと、さっきまでの僕の様に胸ぐらを片手で掴んで高く上げる。
「…………俺は分かったかどうかって聞いてんだ。YESかNOかはっきり返事しやがれ!!」
「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! YES、YESだよ!!」
足をじたばたさせてもがく生徒を乱暴に落として解放する。解放された生徒は噎(む)せ、一刻も早くこの場を去りたいのかふらふらと頼り無い足を必死に動かしてユウジ君から逃げた。
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