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「あぁ、そういや言い忘れてたけど俺の名前は…………」
「ユウジ君でしょ?」
「アホか。フルネームの事に決まってるだろうが。…………お前、よく今まで生きてこられたな本当に」
はぁっ、と歩きながらため息を吐くユウジ君。そんなにため息ばっかり吐いたら幸せ逃げちゃうよ?
「……あんっ? ヒデオ、何をニヤニヤしてるんだ。気持ち悪いぞ」
「いやぁ、ユウジ君はやっぱり優しいなぁと思ってさ」
「はぁっ!?」
動かしていた足を止め、あり得ないものを見るような目で僕を見るユウジ君。やだなぁ、ユウジ君はイケメンなんだからそんなに見つめられたら僕照れちゃうよ。
「お前、頭おかしいんじゃないのか!?」
「えっ、そうなのかな!?」
「俺に聞くなよっ!!」
「じゃあ誰に聞けば良いの!!」
「アイツとかはどうだ?」
「アレってどう見ても銅像だよね!? 銅像に喋っても返事は帰ってこないよ!」
「いや、この銅像は初代校長の魔力がこもってるから返事をしてくれるぞ?」
「それ本当!?」
「嘘だ」
「騙されたぁぁぁぁぁぁ!!」
ショックを受けてちょっと涙目になる僕を見てユウジ君が笑う。うーん、この笑顔を見てたらさっきのスゴい喧嘩をしてた人とは思えないや。
「ほらっ、行くぞヒデオ」
「あっ、待ってよユウジ君!!」
再び歩き出すユウジ君の後ろを慌てて追う。通学カバンを肩にかけ、颯爽と風を切りながら歩くユウジ君の背中は、片田舎から出てきた僕にはとても頼もしく感じた。
「それで、結局ユウジ君のフルネームはどんな名前なの?」
「あぁ、フルネームは【ヴォルク=イーナ=ユウジ】、ヴォルク一族の次男坊だ」
「へぇっ、ヴォルクってなんだかカッコ良い名前だね!」
「そうか? 発音しにくいからあんまり言いたくないんだよなぁ、この名字」
後ろから問いかけると、わざわざ振り返って答えてくれるユウジ君を見て胸の中になんだか暖かいものが溢れ出してくる。
…………大きいユウジ君の後ろに小さな僕がちょこちょこと歩く光景は、周りの人には凸凹コンビのように見えてるのかな?
だとしたらちょっと嬉しいなぁ……
あれっ、もしかして僕の発言ってホモみたいに見える!?
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