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拝啓、親愛なる伯父さんへ。
伯父さんはよく「人生は何が有るか分からないから面白い」と言ってましたね。
その時に若い女の子を連れていたのが伯母さんにバレて、タコ殴りにされていたのを今でも思い出します。
あの事件のお蔭で、僕は今でも女性が苦手です。伯父さんには責任を是非とも取っていただきたいです。
さて、何故僕がそんなトラウマを引き起こすような名言を話の引き合いに出したかと言うと……
「……君が秋野宮ヒデオ君だね?」
今、僕は仁王立ちをしている女の子と見つめあっているからです。
この説明だけなら僕が悪い事をして彼女に咎められているようにしか見えないのは分かってるんだ。
でも伯父さんと違って僕が悪い事しないのは知っての通り。これも叔母さんの教育の賜物だと思います。
「ん? どうしたんだい秋野宮ヒデオ君。…………もしや人違いだったかな?」
自分の勘違いだったと思ったのか、彼女は顎に手を当てながら首を傾げる。
その些細な一挙一動が絵になるのだから神様って不平等だとつくづく思わざるをえません。
「いや大丈夫、合ってますよ。僕は正真正銘、秋野宮ヒデオです」
「うむ、やっぱりそうだったか。君の顔はかわいかったから間違えるはずがない」
「…………そうですか」
間違いじゃなかった事に機嫌が良くなったのか、しきりにうんうんと頷く彼女。何気にかわいいって言われるの気にしてるんですけど。
…………まぁ、ここまでなら普通の会話に聞こえなくもないと思います。でも、もう我慢の限界、臨界点突破。僕は思いきって疑問をぶつける。
「あの何で…………」
何故彼女は――――
「ん? なんだい、秋野宮ヒデオ君?」
何故『生徒会長』の彼女が――――
「男子寮の屋根に立ってるんですか!?」
意味不明さと理不尽さと八つ当たりとかその他諸々を込めて力いっぱい叫ぶ。
叫んだ直後、爽やかな春の風が僕の火照った顔の横を通り抜ける。
それと同時に彼女のスカートも翻し、上を向いていた僕は必然的にその中にあったしましまの布を見てしまって先程よりも更に顔が火照ってしまう。
そんな僕に気づいていないのか、彼女はさも当然といった顔でこう言いはなつ。
「何故って……君はここに帰ってくるだろうし、何より目立つだろう?」
伯父さん、都会の人は怖いです。何考えてるのか理解できません。
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