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「僕が…奈菜さんを? そんな遇然あるわけ……!! ……そんなあの時の…」
「心当たりがあるんですね…。続きを話します。姉はあなたが何を言ったのか知りませんが、ずっとこう言ってました“あなたにもう一度・・・”と。そして、私達が少し目を離した隙に姉は部屋からいなくなっていました。おそらく、さっきの言葉どおり、あなたにもう一度会いたかったんでしょうね。短かったけどあなたと触れ合ったこの短い時間、たったそれだけであなたには他の人にはない大きな魅力がありました、特別な魅力が…。その魅力に惹かれた姉は、もう一度…」
その時、風と一緒に僕の好きだった人の良い木蓮の匂いが鼻を掠めた。
「この香り…」
「由里ちゃん、待って。そこからは私が言うわ」
その声は由里ちゃんの後ろから聞こえてきた。その声に僕達は促されるように顔を向けた。
「…お姉ちゃん!!」
「巧君、こんばんわ」
頬には、涙がひんやりと伝わる感じがした。
「…巧君、泣かないでよ。私、悲しくなっちゃうじゃない」
「僕は…奈菜さんが…死んだって聞いてもう合えないかと何度も思った。…良かった…良かった」
「巧君」
奈菜は安心したように顔をほころばせる、それはまるで母の懐に収まっているようなそんな感じだった。
「巧君、私の言うこと聞いて」
「…嫌だ、駄目だ。聞けないよ!! だって、だってそれきいたら…」
「大丈夫、私はいつでもあなたのそばにいる、あなたの記憶となってあなたの支えとなってね。だから、私の話を聞いて、ね?」
「……分かったよ」
僕はどんな顔をしているだろうか、顔を隠したい…でも、聞かなきゃ。グシグシと涙を拭き取る。
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