テーマ『狐、ペンダント、手紙』

11/13
前へ
/70ページ
次へ
「私ね、あの時あなたが言ってくれた言葉に本当に救われたの。私、ずっと暗闇にいた、そこから救い出してくれたのは巧君。私は巧君のあの言葉があったからこそ、言ってくれたからこそもう一度巧君に会いたかった。会ったら、友達になって、一緒に話したり、学校に通ったり、じゃれあったり、喧嘩しあったり、告白して巧君の彼女にもなりたくなっちゃたの。だって、巧君、真っ白すぎる程純粋で人思いで自分のことなんか投げやりにしてまで、こんな私のこと守ってくれたんだもの」 「……はは、あの時は本当に大変だったよ。奈菜さ…奈菜が目の前に倒れてて、起きても凄く暗くて、辛そうで、悲しそうで、ほっとけなかった。あの日僕は…ある女性に呼び出されてて、彼女のことが好きになりつつあった。でも、彼女に会う前に奈菜に会って、一目で僕は奈菜に惚れたんだ。だから全て君が語ってくれた後、君に言った“好きです”って」 「言ってくれたわね」 奈菜は笑ってくれている、僕も笑わなくちゃ。奈菜もそれを望んでる…。 「それで、私は気が付いたときすぐに会いたくなった。一分一秒でも早く巧君に会いたかった。だからは私は家を飛び出て、あなたを探したの。それで見つけた時…」 奈菜の話は途切れた…。由里ちゃんは静かに、それがどんなに辛くても悲しくても最後まで全てを受け入れる用にしっかり一つも姉の言葉を、僕の言葉を聞き逃さないように僕達を見つめていた。沈黙は続き打ち破ったのは、僕だった。 「…僕も一分一秒でも早く奈菜に会いたくて、彼女の告白を断って彼女に納得してもらって。走って君の家に向かってた。そしたら、奈菜が急に現れて、驚いた。家にいるはずの奈菜が、あんな所にいるんだもん。それで、彼女を抱きしめようとして、手を伸ばした。でも…届かなかったんだ、その前に車が猛スピードで突っ込んで来たんだ、僕に向かって……」 「…私は、巧君を助けようと必死で巧君を突き飛ばして私が車に引かれちゃったの。巧君にはずっと生きていて欲しかったから」
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加