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「…そ、その中に…写ってる人って? もしかして葉瀬川奈菜さんじゃない…よね?」
聞くのが、辛かった、苦しかった。大好きな人が…死んでいたなんて、誰も思いたくなかった。だって奈菜さんは、初めて僕が好きになれた大切な人だから。奈菜さんには温もりも、辛いことも醜いことも合ってそれでも優しく強く生きているそんな目を彼女はしていた。そこに惹かれた、僕が信じなくて誰が彼女を信じるんだ!! お願いだ由里ちゃん、違うと言ってくれ!!
「……!! …葉瀬川…奈菜は…私の姉です。でも、何処でその名前を…」
「……嘘だ」
「えっ?」
「彼女は葉瀬川奈菜は生きている!!」
唖然としていたが、キッと顔をしかめた。
「……彼女は、姉は、…交通事故で昨年の今日無くなっているんです」
「えっ?」
「姉は、今日誕生日だったんです。姉は、車に引かれたんです。その車は引き逃げをしてまだ見つかっていません」
「…嘘だ」
苦しい、喉がちくちくする。もう止めてくれよ…、僕は彼女が好きだ。…それなのに、それなのに。これは神の罰なのか、どうしてこんなことするんだよ。どうしてこんなことになったんだよ。
「姉は、もともととても穏やかな人でした。彼氏を作り、幸せも手に入れていた。…でも、それを彼氏は、壊してしまった。彼氏は姉と分かれてしまったんです」
「な…なんで?」
「彼氏さんには姉とは別に好きな人が出来てしまったのです、姉は何度も彼氏さんを引き止めました。それでも、彼氏さんは行ってしまいました。姉にとってあの彼氏さんは本当に大切な人で一生その人と歩み続けようと思っていたんでしょうね。姉は誕生日の雨の日に別れを告げられてしまいました。ここまではその彼氏さんに聞いたことです、その後のことは想像でしかありません。姉は多分、今まで思い続けてきた自分の思いと彼氏さんの幸せになって欲しいという思いとで葛藤していたんでしょうね、それから何時間か雨に打たれ、葛藤しずっと暗闇にいたんだと思います。そして姉は倒れました、その姉を家に連れてきたのはあなたじゃないですか? あの時、あまり顔を見てなかったけど彼に雰囲気が凄く似てる」
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