空虚の境

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砂と化した建物の数々。 辺りに見えるのは、ただ重なり合うようにある人の塊。 何度も繰り返される胸の痛み。 この覚めない夢の中で、たった一人世界に取り残されたような孤独感と心の底から溢れる何かが・・・。 同時に頬にあついモノを感じた。 視界は歪み、ただ手に掴んでいた指輪(リング)を強く握りしめた。 今では遠いキラキラとした思い出と、あの笑顔を胸にしまい込んで・・・ この荒野の中、歩き出す。 ハッ 見開くと、いつもの天井が広がる。 「夢・・・?」 (いやな・・・嫌な夢だ) 如月那通 (キサラギ・ナツ)は袖で汗を拭く。 「那通支度できた?」 「おい・・・・」 と言いかけたと同時に頭上に強い衝撃が襲う。 「着替え途中なら・・・そう言って!」 「お前・・・ノックもなしで勝手に入って来た奴に言われたくない」 「何、朝からケンカ?」 「聞いてお兄ちゃん!このバカ!私、お嫁に行けない!」 「那通・・・責任とれるの?」 (責任って・・・) 榊木かなで、三木静は実の兄妹ではない。 この寮に住む者は、特別な理由があり、この二人とは、もう7年共に暮らしている。
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