プロローグ

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彼は母方の祖父母に預けられる事が、家族が亡くなったその日に決まった。 彼は家から自分の荷物をまとめる為、自分の家に帰る。 「……ただいま」 明かり一つ灯っていないこの家に、彼は帰ってくるといつものようにそう言った。 だが「おかえり」という言葉は返ってこない。 静まり返ったこの家に、いつもいるはずの家族はいない。 父親も 母親も 妹も もうこの家にはいない。 誰もいない。 そして、彼は…… そこで初めて家族がいなくなった事を実感した。 玄関に崩れ落ちるように、彼は大声で泣いた。 悲しくて 悲しくて 涙は止まらなかった。 止められなかった。 声がかれるまで彼は大声で泣き続けた。 この日 中学二年の夏。 彼―― 霧島 恭也(きりしま きょうや)が…… 最後に泣いた日だった。    
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