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(まずい……この流れは非常にまずい……)
家の中は暑いわけでもないのに、恭也の額には汗が出ていた。
(やむを得ない……こうなったら……)
恭也は一度息を吸って吐いてから、口を開く。
「お気遣いはありがたいんだが、俺は誰かと一緒だと一睡もできないんだよ」
泊まったとしたら、恐らく優太の部屋で寝る、と恭也は予想を踏んでいた。
それを狙って、こういう事情を出せば相手も諦めるに違いない
「あら、大丈夫ですよ」
「……へ?」
「空いてるお部屋がありますから、そこを使ってください」
案の定、自滅。
悪意なく微笑む千鶴の表情が、恭也の抵抗にとどめを刺した。
「わーい、おにーさんとお泊まりー」
ぱぁっと嬉しそうに由芽は笑い、もう泊まる事が決定したような流れになっている。
「じゃあじゃあ、おにーさん、由芽と遊ぼー」
「ちょ、ちょっと待っ――」
他人の家に泊まるなど言語道断である恭也は、まだ抵抗しようとしたが……
「霧島さん」
と、千鶴。
「枕は固いのと柔らかいのと、どちらがいいですか?」
「………………」
もう千鶴は泊まる事を前提で恭也に尋ねた。
そして、恭也は……
「……柔らかい方で結構です」
抵抗を諦め、お泊まりコースを受け入れた……。
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