7332人が本棚に入れています
本棚に追加
/1171ページ
部屋を出て、階段を降りるとトーストの良い香りが廊下まで広がっていた。
リビングと繋がっているダイニングには、白いニット帽を被った制服姿の優太と、詩恩が既に朝食を食べている。
「あ、霧島さん、おはようございます」
優太は恭也に気付くと、社交的に明るく挨拶をする。
詩恩もおどおどと軽く頭を下げて、すぐに目線を逸らした。
「あぁ……おはよ」
恭也は昨日と同じ椅子の位置に座り、由芽も隣に座る。
目の前にはトーストや目玉焼き、サラダなどの朝食が並べられており、恭也の分も当たり前のように置かれていた。
「あら、おはようございます、霧島さん」
「あ、どうも……」
今日も昨日と変わらないエプロン姿の千鶴。
台所からダイニングに来ると、手に持っていたコーヒーを恭也に渡した。
「お砂糖は要りますか?」
「いえ、結構です」
恭也は渡されたコーヒーを一口飲み、ほどよい苦味を味わう。
千鶴は席に着かず、また台所へと戻っていく。
「ん?」
コーヒーをテーブルに置いて、ふと、恭也は朔磨の姿がいない事に気付く。
「あれ……朔磨って人はどうしたんだ?」
「朔磨さんなら、今朝早くに出掛けましたよ」
「……そうか」
朝からあの強烈な者を見ずに済むというのは、ある意味ラッキーだった。
最初のコメントを投稿しよう!