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“由芽はね、なにかの病気みたいでね。毎月検査しないとダメみたいなんだ"
以前、公園で会った時、由芽がそんな事を言っていた。
“由芽の心臓は少し特別って、おかーさんに言われた"
そう彼女は言っていた。
なのに、千鶴は“風邪"と言って嘘をついた。
「………………」
「あら、どうかなさいました?」
「……いえ、何も」
他人に自分の子供の事情を話したくないのかもしれない。
今はそう納得するしかなかった
「じゃあ、そろそろ行きます。色々とありがとうございました」
軽く頭を下げる恭也に、千鶴は優しい笑みを返した。
「ふふ、またいつでも遊びに来てくださいね。由芽ちゃんが喜びますから」
「……まぁ、検討しておきます」
恭也は苦笑い浮かべ、手を振る千鶴にもう一度頭を下げてから外へ出て行った。
こうして、時ノ宮家での一泊は終わりを迎えた。
由芽の病気や
奇妙な家族
千鶴の嘘
それら全ては分からないまま……。
それは“今"の恭也にはまだ分からない事だった。
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