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今から5分前。
恭也は自宅のアパートを出て、図書館目指して歩いていた。
すると、この街には少し似合わない高級車が恭也の目の前に止まり、黒いスーツの男達に車の中に引きずり込まれた。
そして、今現在どこかへ搬送中
「……とりあえず、この状況と展開を説明してくれよ」
恭也はこの状況に怯える訳でもなく、むしろ冷めている。
「本当にごめんなさい。貴方に会わせたい人がいるんです」
両サイドの黒いスーツの男達は喋らず、運転中の千鶴がそう説明した。
「じゃあ質問を変える。何で目隠しして手を拘束してんだよ?」
「今から行く場所の位置を知られては困るからです。手は抵抗されない為です」
「……あっそ」
素っ気ない恭也の態度を、千鶴はバックミラー越しに不思議そうに視線を向ける。
「随分冷静なのですね」
「パニックになっても仕方無いからな」
やはり敵意を向けるような冷めた態度を維持している。
千鶴に対しても、敵意から敬語など使っていない。
「アンタらの家が変だとは思ったが、裏は悪の組織ってオチかよ」
軽蔑して嘲笑うと、千鶴はバックミラーから目を離して、真剣な表情を浮かべた。
「悪……けして、否定しきれないかもしれません」
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