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拉致されてから十数分後、車は止まり、扉が開けられる。
両サイドにいた黒いスーツの男達は丁寧に恭也を外へ連れ出す
目隠しをされたまま男達は恭也の肩を掴んで誘導をする。
(風がない……室内か?)
肌に風を感じない為、ここが室内であると理解したが、情報が少なすぎる。
しばらく歩き、エレベータへ乗せられ、またしばらく歩くと男達は恭也の肩から手を放し、目隠しを外す。
そして、恭也の視界に映ったのは一つの扉だった。
「……ここは?」
恭也は左右を確認すると廊下が奥へ奥へと続いていた。
途中に目の前の扉と同じデザインの扉がいくつもあり、研究所のようにも見える。
見る限りにはどこかのビルの中と思えるが、窓がない為、ここが地下なのか何階なのかは不明。
「貴方達は下がって結構です」
恭也の後ろにいた千鶴はそう言うと、男達は一礼してから去っていく。
「霧島さん、ご不便お掛けして申し訳ありません」
「……全くだな。犯罪だろ、コレ」
「本当に申し訳ありません」
深く頭を下げる千鶴に恭也は眉をひそめる。
(……まるで別人だな)
昨日の千鶴とはどこか雰囲気が堅苦しく
今の千鶴には柔らかな表情など一つもなかった。
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