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遠回しに“夫婦ではない”と言われても、冬次郎は表情一つ変えなかった。
「んふふ、なるほど。それで、君の出した答えは?」
顎に置いた手を離して、恭也は冬次郎を真っ直ぐと見つめる。
「恐らく、千鶴さんの子供は由芽と優太。それ以外はアンタの子供でもなんでもない、というのが俺の答えだ」
実際に千鶴の年齢を知っているわけではないが、少なくともあの顔にまだ老いは感じない。
無論、実は40代ですと言われたらそれまで。
「んふふ……」
恭也の指摘に冬次郎は他人事のように、薄く笑う。
「残念、それでは不合格だ」
「……じゃあ、解答を頼む」
冬次郎は薄い笑みを浮かべたまま、一呼吸置いて言った。
「何故なら、私達は誰一人血など繋がっていない」
あっさりと言ったその言葉に、恭也は目を見開いた。
「一人も……?」
「そう、私以外は時ノ宮という苗字も偽りだ」
偽り。
あの家族は偽り。
そう気付くと、あの家族の温かさが酷く気持ち悪く思えた。
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